プロはこう見る金相場の予想
今年大きく動いた相場といえば金(ゴールド)がやはり筆頭に挙がるでしょうか。年初は800ドルくらいだったのが、夏場過ぎに抵抗線だった
1000ドルを突破すると、あれよあれよという間に1200ドル台まで上昇。現在は調整したとはいえ1100ドル台の推移です。
個人的に金で思い出すのは十数年前のこと、あるスイス系銀行の外国為替部が顧客向けの相場予想ダービーをやっていて、毎日最優秀者
1名に1トロイオンスの純金コインをプレゼントするという企画がありました。しかもそれが半年くらいの間行われていたのですから驚きです。
競合相手だった私もなぜか参加を許されていて、運よく3回ほどトップになり、その銀行の刻印が入った純金コインを3枚いただきました。その後小遣いに困って貴金属店で売ってしまいましたが、たしか当時は1オンス400ドルくらい、1グラム1200円くらいだったでしょうか(注:1トロイオンスは約31.1グラム)。今の相場は3300円くらいですから、持っていればコイン3枚で30万円以上!思えば安い時に売ってしまったものです。逆にいえば、金が安かったからこそこんな太っ腹な企画も可能だったのかもしれません。
閑話休題。それで今後の見通しはどうかというと、専門家の予想は「来年1350ドル、2年後1500ドル」(産金会社ニューモント・マイニングCEOのオブライエン氏)、「来年1300ドル」(スイスの金融大手UBS)など、相変わらず強気が目立ちます。ドルの下落と投資需要、特に中央銀行(外貨準備)による購入がサポートとなるとの見方です。
確かに今年は、超低金利と過剰流動性によりドルの価値希薄化懸念が高まり、ドルが全面安となるのと反比例して金や原油などの現物資産が高騰しました。金の価値はドルの価値の裏返しであり、ドル安が金相場急騰の原因であることは疑いようがありませんが、今年のドルの下落率は3月の高値から見ても18%くらい(ドルインデックスベース)ですから、今年50%上昇した金相場に対するドル安の貢献度は最大でも20%くらいのものでしょう。
中央銀行や年金ファンドの購入など需給要因ももちろんあるでしょうが、中期的にみればインパクトは微々たるものです。となると残りの30%は何で説明すればいいのでしょうか。おそらくそれは、金融危機に対するトラウマなのだと思います。一昨年のサブプライム問題、昨年のリーマンショックと金融危機が続き、複雑な仕組み商品のみならず、金融商品全般に対する不信感が高まりました。投資家はより単純なものを求めるようになり、資産価値の究極的な源泉ともいえる金に資金が集中したわけです。「金融」という言葉はもともと「金を溶かす(融かす)」ことに由来しているそうですが、文字通り「反金融」の流れが金への原点回帰を促したのだと思います。
しかし、リーマンショックから1年が経過し、現在は金融危機もほぼ沈静化したといっていいと思います。株式市場にも信頼感が戻り、ダウは
1万ドル台を回復しました。ドルの信認低下にも歯止めがかかり、金融商品に対する極端な敬遠ムードも緩和されています。ドルの今後の下落リスクを考慮しても、30%ものプレミアムはもはや正当化しづらいと思います。
金はご承知の通り金利や配当がつきませんし、大量に保有するには金庫(保管料)も必要です。値上がりを前提としない限り、投資家や中央銀行に
とっては負担の大きい資産です。
私個人の見方ですが、来年はこれまでのドル独歩安が修正されるとともに、金もその輝きを失っていく可能性が高いと見ています。専門家はまだ上昇するといいますが、一般に保有されている金が上昇して困る人はあまりいないため、金業界の人たちは常に強気であるということを差し引いて考えなくてはなりません。